あじゅ

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 空に向かって大きく羽ばたいた君の、誇らしげで、それなのに何故か悔しそうなあの瞳が、瞼の裏に貼り付いて離れない。大きく開かれたあの小さな口が紡いだ言葉を、きっと生涯忘れることはないだろう。
 時間というものは酷く残酷だと、そう思ったのはこれで何度目だろう。薄れた記憶は、君の声のほんの一欠片ですら再生できなくなっているのに、あの日の君だけが異様に鮮明だ。薄ぼけて褪せた思い出のワンシーンに、真っ赤な夕焼けに染まる窓際の君が、極彩色を纏って僕を見ていた。その唇の揺れる様に、きっと囚われている。
 君の最期の言葉が、今も、ずっと僕を呪っているんだ。嗚呼、それはなんて……。

4/2/2025, 10:57:27 PM