浜崎秀

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僕の職場は車で一山超えたところにあって、毎日都会から車を走らせて隣町まで通勤している。当然帰る頃には日も暮れていて、家に着くのはすっかり夜中だ。ただ悪いことばかり、というわけでもない。夜中に山道を走らせていると木々が晴れるところがあり、そこから都会の様子が少し覗ける。そこから見える都会の夜景は絶景の一言だ。眼科に広がる無数の光、その遥か上を車で走る疾走感。なんだかんだこれがあるから仕事も続いている。
だけどある時気づいてしまった。あの光の正体は住民一人一人の帰るべき家だ。じゃあ自分の家は?一人暮らしで毎日が家と職場の往復。仕事の出会いはおっさんばっかりだし休日は寝てる。当分は家庭を持てる余裕なんてない。あの都会の光の中に自分の家は入っていない。不思議だ。家は確かに存在しているのに、仲間はずれにされたような、言い知れぬ疎外感を感じる。

前を向き、アクセルを踏み込む。車は暗闇に消えていく。

『夜景』

9/18/2022, 2:04:57 PM