かたいなか

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「丁度良いじゃん。10月29日、早朝4時半ちょい過ぎたあたりから、部分月食だとよ」
それこそ「暗がりの中で」、5時14分あたりに一番削れてるっつー月食を、観察してれば今回のネタ、ミッションコンプじゃね?
某所在住物書きはポツリ言って、しかし早起きの準備も天体観測の用意もせず、ぬっくぬくの毛布にくるまった。
早朝である。己は夜型である。食の最大だけ狙うにせよ、5時14分など起きられようか。

「『夜の』暗がりの中で見られる、次の月食は?」
朝とか聞いてねぇよ。物書きはネットに「次」を求める。しかし検索結果が提示したのは、29日の月食と、何故か2023年の部分「日食」であった。

――――――

子供の頃、自宅の廊下の暗がりはやたら怖いのに、布団にくるまった中の暗がりは妙に落ち着く気がしたこと、ありませんか、ないですか、そうですか。
なんて前置きはこのぐらいにして、今日はこんなおはなしをご用意しました。

最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が暮らしており、その内末っ子の子狐はお花とお星様と、キラキラしたものが大好き。
ビー玉、おはじき、押し花にしたお花、誰かが捨てたチャームにレジン細工等々、綺麗なものをお気に入りの宝箱に詰め、たまにそれらを広げてクロスで磨いては、ひとりほっこり、尻尾をビタンビタン。
それはそれは、幸せに暮らしておったのでした。

そんな子狐の最近のトレンドは、押入れの暗がりの中で見る、サンキャッチャーの光の万華鏡。
室内に飾って、太陽の光を受けて、キラキラ小さな虹をばら撒く飾り玉は、コンコン子狐の宝物です。
まだ暑かった夏の頃、8月7日かそのあたりに、猫又の雑貨屋さんで手に入れました。

そのサンキャッチャーが日光だけでなく、懐中電灯なんかでもしっかり光をばら撒くと、コンコン子狐諸事情で、学習してしまったからどうしよう。

「キレイ、きれい!」
今日もコンコン子狐は、宝箱からサンキャッチャーと、8月7日に諸事情で人間から貰ったLEDライトを取り出して、押入れの中に入ります。
光の当て方にコツこそありますが、水晶か金剛石のような飾り玉に、イイ感じに200ルーメンのスティックタイプが光を当てると、
上にも、下にも、右にも左にも、小さな虹の粒が溢れ出て、まさしく光の万華鏡の中に居るようです。

「あっちこっち、キラキラいっぱいだ!」
くるくるくる、飾り玉を回転させれば、光も一緒に回ります。
くっくぅーくぅー。ご機嫌子狐は尻尾をビタンビタン。鼻歌なんか歌ったりして、押入れの暗がりの中で光を楽しみます。
そのままコンコン子狐は、ごはんの準備ができて優しい母狐が呼びに来るまで、
暗がりの中で、サンキャッチャーを回して、光を当てて、それらを幸福に眺め続けておりましたとさ。

お宝のサンキャッチャーを押し入れに持ち込んで、暗がりの中で光を当てて遊ぶ子狐のおはなしでした。
その後作中のLEDライトの充電が切れて、充電の仕方を知らぬ子狐が、都内で漢方医として労働している父狐に「治して」と治療をせがむのですが、
お題の「暗がりの中で」とは別に関係無さそうなので、気にしない、気にしない。

10/28/2023, 2:21:50 PM