耳鳴りのようにしつこい蝉の声。
アスファルトから放たれる熱気。
ジリジリと熱し続ける太陽。
道路上ではミミズがこんがりと焼き上がっていた。
「あーーーーーーづい」
外を歩くだけで熱中症になりそうだ。
着信音が鳴りスマホを見れば『アイス買ってきて』の文字。
「こんなに暑いのにふざけんなよ……。」
言うことを聞くのは癪にさわるが、とにかく涼みたい。その一心で目に入ったコンビニへ足を踏み入れた。
コンビニに入るともう別世界のようだった。涼しい。ここに住みたい。漫画もお菓子もアイスもある。
イートインがあるコンビニだったので、チョコアイスを買ってそこで齧る。おいしい。涼しい。図書館も涼しいがあそこは飲食禁止だ。
「ここがオアシスか……。」
いずれは出なければいけないオアシス。居心地の良さに心を癒されながらも、帰るべきところはここではないと言う気持ちも湧いてくる。砂漠を旅する人たちも、オアシスから出る時同じことを思ったんだろう。
「少し休んだら帰るか……。」
ちょうどアイスを食べ終わったところで、スマホの画面に『まだ?』というせっかちな同居人からのメッセージが表示された。
「遅い!アイス!!」
「買ってきてもらっておいてぞんざいだな。チョコミントアイスにするんだったか?」
「それ、チョコミン党に失礼だぞ!私は違うけど!!」
同居人はアイスを取り出し、美味しそうに食べ始める。彼女の身体は、暑い暑いというわりに家にいたからか自分の体温より低そうだ。
「あっっつう!!」
抱きしめた途端あがる色気のない声。
「暑い!離れろ!!」
「俺を冷やしてくれよ、外暑かったんだよ……。」
「知らん!保冷剤抱えとけ!!」
なんと薄情なやつだ。オアシスの包容力を見習って欲しい。
抱き込まれてギャーギャー騒ぐ彼女を黙らせるために、買ってきたアイスをスプーンですくって彼女の口に押し込んだ。
【オアシス】
7/28/2025, 4:51:58 AM