あの頃は俺も莫迦だった。今となってはもう黒歴史として消化されつつある恋。もっとできたことはあったんじゃないのか?「好き」の一言ぐらい言えたら良かった。そうしたら、あいつは今も隣に居てくれただろうか。
先日、歯ブラシを一本捨てた。俺の好みじゃない、甘ったるい菓子を胃袋に詰め込んだりもした。ゲーセンでとった大量のメルヘンなぬいぐるみを押し入れに詰め込んだ。ついでにネトフリも解約した。当たり前のようにあったものが、ついに邪魔になり始めた。
「綺麗だ」そう口に出した。他人に興味は無かった。ひとりで生きていくと決めていた。はずなのに、柄にもなく添い遂げたいとなど思った。それすらも烏滸がましかったのだろうか。いや、俺のせいか。確かに最初は顔が好みだったから近づいた。だが、段々距離を縮めると、知らなかった一面が見えて、その度に脈が速くなって、心臓のうるささにまた俺は恋を知っていった。
この世の何よりも苦い味のした恋。しなければよかったと後悔している恋。そんな二人だけの恋。
なあ、最低だったよな、俺。
十四作目「二人だけの。」
いつかの日に書いた「空恋」と対になる物語。
7/16/2025, 9:54:08 AM