三日月

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美しい

 美しい友達が沢山周りにいて、羨んでいたのは何時のことだっただろうか。

 高校一年間の夏前、入部した写真部に好きな先輩が出来た|鈴美《すずみ》は、何時も部活で先輩を見ているだけで幸せになれたのだった。

 ところが、部活の同学年や先輩女子から、先輩を見るのは辞めるようにと注意されることに⋯⋯それも、鈴美見たいなぶすに先輩を見る資格が無いという、理不尽な理由で⋯⋯。

 確かに先輩は、イケメンだから、こんな不細工な女に見つめられてたらたまったもんじゃないのかもしれないけど、でも、先輩も目が合うと何時もニコッと微笑んでくれたし、直接先輩からは何も言われることは無かったというのに⋯⋯。

(一体何なよ⋯⋯)

 部活の同級生や先輩にイラッとしながらも、あまり気にせずに先輩を見つめる日々を続けていると、また理不尽なことを言ってきた。

「あんた見たいなブスは相手にして無いから!  告白したって無駄よ⋯⋯無駄」
「こ、告白だなんて⋯⋯そ、そんな恐れ多いこと⋯⋯」
「自分の立場分かってんならイイのよ」
「⋯⋯」

 なんだか皆に美しい自慢をされた様で悔しい気持ちになった。
 そもそも、最初から自分が先輩と釣り合うなんて思ってもないけど、その理由がブスだからだなんて一切思ってもみなかったので、悔しくて仕方なかった。

(ダイエットして、可愛くなってやるんだから⋯⋯)

 こうして、夏休み中、数日程写真部も活動の日があったけど、それを休んで全力でダイエットに励むことに。

 可愛くさえなれば文句言ってこないに違いない!  
 夏休み中に可愛くなって見返してやるんだ! 

 というのが、鈴美の考え出せた結論だったのだ。

 そのため、夏休み中は早朝と夜の二回マラソンをすることに⋯⋯食事も一日三食から二色の生活に変更して、野菜中心にしていったし、一日に腹筋背筋も続けることに⋯⋯。

 夏休み明け、久しぶりに学校に行くと、周りの皆が誰!?  と分からない程にまで痩せて美しく変貌を遂げていた。

「誰あれ?」
「あんな美しい子うちのクラスにいたっけ?」
「転校生?」

 あまりの変貌ぶりに誰も直ぐには鈴美だと気づかなかった。

 久しぶりに部活に行っても、先輩も誰一人鈴美だとは分からず⋯⋯ところが、そんな中分かってくれたのは鈴美の憧れのイケメンな先輩ただ一人。

「鈴美さん久しぶり、随分痩せたんだね、前のままでも全然可愛かったのに⋯⋯雰囲気まで変わって美しくなったね。  凄いじゃん!!」
「えへへ⋯⋯ありがとうございます」
 
 先輩に褒められて凄く照れてしまった。

 だからと言って、今のところ特に憧れの先輩とは何ともないけど、それ以来、鈴美に対して同級生も先輩も何も言ってこなくなったのは事実⋯⋯。

 毎日イケメン先輩を見ていても、文句も言われなくなったのは凄い嬉しいことだった。

 今では周りから美しくならためにどうしたらいいのか聞かれるので、皆に食生活や痩せるためにした運動などのアドバイスをしている。

            ――三日月――


1/16/2023, 12:43:17 PM