いくら太郎

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あなたがいたから


「ペットショップは嫌い。」
ショウウィンドウの中の子犬は楽しそうに彼の指先を追いかけている。
彼の声が小さかったから、僕も隣に座ってみた。
「考えすぎってよく言われるんだ。」
確かに、とは言えなかった代わりに子犬の鼻先をとんとんと軽く叩いた。
「帰ろう、キンちゃんが待ってる。」
白い指が僕引っ張って歩き出した。

「ただいま。」
彼はいつも水槽の中のキンちゃんに声をかける。
前に一緒に出かけられないのが悲しいと言ってた。

人間は可哀想な子や悲しい思いをした子の方が手をかけてやりたくなるらしい。
彼は勝手に可哀想、悲しそうと思い込むところがあるから余計にそれがひどい。

だから彼は僕のことも可哀想だと思ってる。
可愛そうだなって目でいつも撫でてくる。
僕のせいだね。
そんなことも言ってくる。嫌だなぁ。

今日は一緒にお風呂入って、一緒に寝るみたい。
嬉しいけど足がちょっと冷たいね。
僕があっためられるかな。

昔はね、僕も可哀想に見えたかもしれないけど今は全然可哀想じゃないんだから。
その考えすぎな頭でいっぱい考えてはやくわかって欲しいな。
僕は幸せだよってこと。

6/20/2024, 2:03:55 PM