やだやだ、遅刻遅刻~、と
食パンを囓りながら学校までダッシュしていたら
タバコ屋の角でドシ~ンとぶつかった
イテテテ、と思って見上げると
どこ見てんだよ、と怒鳴られる
なによアイツ偉そうに、と思いながら朝のチャイムにギリギリ間に合ったら
転校生が来るらしい
ガラガラと空いたドアから
先生と転校生が入ってきた
先生が紹介すると
朝のアイツじゃないか、、
あー、あの時のー!!
と二人で声を揃えると
なんだ知り合いか、では隣の席に、で最悪の二学期が始まった
それから教科書忘れただの、消しゴム忘れただの、ことある毎に話しかけてくる
馬鹿なんだから忘れるのよ
私は無視したわ
ある日、暮れたグラウンドでアイツを見かけた
やっぱり馬鹿なんじゃないの、こんな時間まで、筋トレなんかして
夢を見るのもいい加減にしなさいよ、どうせ下手くそなんだから、と思いつつも
なんだか無性にイライラするの、金網越しに
やっぱり負けたらしい、
どうせアンタがヘマこいたんでしょ、と笑うと
一瞬こっちに目を見開いて、それから黙って俯くのよ
ざまあないわね、気にしないでしょ
どうせ忘れるんだから
それからまた突然転校するとか聞いた時には清々したわ
アンタの顔を見なくて済むんだから
でも、どうしてだろう
裸足で駆け出したい気持ちを抑えて
スニーカーの靴紐を結ぶ
間に合わないかもしれない
でも間に合うかもしれない
19:35発の飛行機は
もしかしたら遅れるかもしれない
私は走る
都市を結ぶ光線は
眩い光で
私は眩しくて
目が潰れてしまう
涙が溢れる
涙が零れる
ごめんなさい
私は走る
まだ間に合うかもしれない
さよならを言う前に
伝えたい言葉がある
まだ間に合うかもしれない
忘れてしまう前に
『さよならを言う前に』
8/20/2024, 2:52:12 PM