Ryu

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透明なガラスのように、君の心の中は見透かされる。
せせら笑う奴らが通り過ぎるのを待って、君は路地裏から顔を出し、頬を伝う涙をぬぐう。
本当は、やり返したい。
あんな薄っぺらい奴らに負けたくない。
でも、透明な心はガラスのように脆く、投げつけられた石によって粉々に砕かれ、その破片で大切な人までも傷つけてしまう。

ならば一人で生きる。
誰にも迷惑はかけたくない。
君はそう言って、自分の部屋に鍵をかけ籠城した。
君が本当に望むものが、この世界には存在しないから、誰かと争うつもりもなく、奪い合うこともない。
だけど、人の悪意はそこかしこに転がっていて、ともすれば踏みつけて破壊してしまう。
そして、容赦ない攻撃が始まる。

この世界のすべてが透明で、お互いの心を見せ合うことが出来たら。
何かを隠す壁があるから、その何かのために分かり合うことも出来ない。
そしてただ、力の強い者だけが道路の真ん中を闊歩する。
硬く、耐久性のある金属で心を覆い、弱さをひた隠して道路に唾を吐く。
せめて、透明な金属があればいいのに。

「それでも、この世界には立ち向かわなくちゃいけないんだってよ」
「心がガラスのように砕かれたら、もう何も出来ないよ」
「砕かれない心を持って。そして、他人と分かり合って」
「そんなこと、理想論でしかない」
「世界中に蔓延した疫病があっただろ。それから身を守り、その上で人と見つめ合えたのは?」
「…アクリル板?」
「よし、素材をそれに変えていこう」

透明性では少し劣るが、水族館の魚達だって守られている。
そう言うと、君は少し笑って、
「あんなに雄大な世界を、心に作り上げられたらイイね」
出来るさ。
まずは部屋の鍵を壊して、外の空気を吸い込んで。
粉々になった心は、箒で拾い集めて丁寧に再構築だ。
大丈夫、透明な心のおかげで君の優しさは皆に知れ渡っているから、きっと少しずつ補強してくれる。

さあ、始めよう。

3/14/2025, 2:10:20 AM