「いつまでも捨てられないものがあるんだ。」
彼はそう言った。
「それは本当にかい?」
僕は疑問に思ったから確かめてみた。
「嘘じゃないさ。」
「思い入れが深いものなのかい?それとも形見とか?」
「そんなところさ。」
「そうなんだな。
けど、捨てられないって言うとちょっとよくないんじゃないかい?」
「あー、たしかに。捨てたいけどが捨てられないものって勘違いされちまうよなぁ。」
「そうそう」
「そうなんだけどなぁ。本当は捨てたいんだよ。」
「大切なものなのになんで?」
「その時の記憶がよみがえるだろ?
必ずしもいい思い出だけじゃないってことさ。」
「なるほどなぁ。ならそこに捨ててみれば?」
「どうするかなぁ。形見で大切なものだけど、後悔とかもあるし、ある意味自分を戒めるためにも持ってるんだよな。」
「けどもう、大昔の話だろ?
俺が変わりに捨ててやるよ。」
「お、おい💦」
水の音とともに、ソレは沈んでいった。
「はい、これで捨てれたな
後ろ向いてないで、前向いて行こう。」
「そうだな。いつまでも後悔するのはよくないよな。
ありがとう、ちゃんと進むよ」
「おう、急に捨ててゴメンな、こうでもしないとこの先お前の笑顔見れなくなりそうでさ。
思い切っちゃった」
「いいよ、モヤモヤしてたのは事実やし、助けられた気もするからさ」
「ならよかったわ、あんまり自分責めるなよ。
俺が捨てたから共犯。痛み分けってことで!
んじゃ、また明日な。」
「ありがとう。お前がいてくれて助かるよ。」
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「さーて、これどうすっかなぁ。」
こうして、僕の捨てられないものが1つ増えた。
8/18/2023, 1:53:56 AM