小鳥遊 桜

Open App

【忘れたくても忘れられない】


また…いじめられた。

大人しいからって、バカにして…ムカつく。

でも、何も出来ない。
何も…してくれない大人たち。

〝いつでも相談してくださいね。〟
嘘つき。
〝あの子、また来たのよね〜。保健室をなんだと思ってるのかしら。〟
裏でいじめっ子たちと他の先生たちと一緒にバカにしやがって。


私は、いつからか、学校に行かなくなった。
どうせ、義務教育だし…退学も何も無い。

私は、学校に行かないようになってから、公園で遊ぶようになった。
暑い日は、図書館で本を読むようになった。


ある暑い日の夏。
公園で遊びたかったけど、暑すぎて、私は、図書館に行った。

いつもの席で、本を読もうと思った。
けど、女の子が座っていた。
………知らない子。
クリーム色のロングヘアのふわふわしてる髪。

ちらっと私の方を見て、女の子が読んでいた絵本を持って、こっちに駆け寄ってきた。
年下なのか分からないけど…身長、低い子だった。

『おねーちゃん、いつもここにいるよね?』

そう言ってきた。

「そう…だけど、だれ?」
『私、るな!12歳!中学生だよ!』

周りの人たちの目線が一気に集まる。
職員さんが来て
〝お嬢ちゃん、静かにね。〟
と言われた。

……なんで、怒られないといけないの。


結局、私たちは外に出た。
暑い。無理…

『おねーちゃん、ごめんね。』
「るな…私、11だから、お姉さんじゃないから…あなたがお姉さんなの。」

るなは、あっ…そっかそっか。って言って。

『おねーちゃん…じゃなくて、えっと……』
「くるみ。」
『うん…そうだっけ。』

不思議な子。変な子。
そんな感じ。

『くるみちゃん、遊ぼ!』

そう言って元気よく公園まで走っていった。

元気な子。
……私と大違い。



それから、たくさん遊んだ。
日焼け止めしっかり塗ればよかった。
ちょっとだけ、日焼けしたかも。

ねーねー!くるみちゃん!って大きな声で呼ばれた。

「どうしたの?」
『学校、行かないの?』

…なんで、知ってるの?
あー、そういえば、いつもここにいるって言ってたし…知ってるのは、当たり前……あれ?

「るなは、学校行ってるの?」
『えっと…うん!行ってる!』
「ふーん。私、行かないよ。いじめられるから。」
『…そっか。夏休み終わったら、行ってみてよ!新しく来る先生がちゃんとしてくれて、いじめっ子たち、みーんな転校するから!』

……何言ってるの?


『あ!もうこんな時間!くるみちゃん!』

そう言ってぎゅーって私を抱きしめた。

『――――――――――』

『じゃあね!また、必ず会えるよ!』

そう言って、帰った。

嘘つき。
そう思いたかったけど…。

本当に、いなくなるの?
最後の言葉、あれはどういう意味?






夏休みが終わって、何が何だか分からないまま、教室の扉を2年ぶりにあけた。
不思議な顔してる人、無視して会話をしてる人…
そして、なぜか、怯えてる人たち。
あの人たちは、いじめっ子たち。

私を見て、すぐに走って私の方へ来て、こう言った。

〝くるみちゃん!許して!〟
〝髪が変な色してるってバカにしてごめんなさい!〟
〝目つき悪いとか言ってごめんなさい!〟

それぞれ色んなことを一気に言われた。
なにこれ。何が起こってるの?

ガラッと扉がひらいた。
知らない先生…るなが言ってた新しい先生?

〝あなたたち、もう決まったことだから、大人しくしなさい。親に連絡しましたので。引越し、頑張ってね。〟


……なんで?
本当に…何がおこってるの?
分からないけど…本当に、怖かった。

困惑していると、新しい先生がこっちに来た。
クリーム色のセミロングのクセ毛の先生。
あれ?…どこかで見た色の髪。

〝るなから聞いてた通りね。ごめんなさい。もう大丈夫。この子たちは、バラバラに転校させます。先生が費用出すから。〟

「まって……なにこれ。わかんない。何が起こってるの?」
『あ、くるみちゃん!私の家ね、お金いっぱいだから、すぐに、えいってして、転校出来るの。1番治安悪い学校送りにするからね!』

そう言って笑う。るなが怖い。

私は、カバンを持って、すぐに学校から逃げた。










「るな…怖がるようなこと言ったらダメでしょう?」
『だってー。いじめっ子たちを消したら、るなのこと大好きになって、結婚してくれるかなって思ったんだもん。』
「もう、お姉ちゃんが出来ることには限界があるからね?」
『はーーい。』
「じゃあ、とりあえず、あの子の家の近くに住むことになったし、手土産を持って、引越しの挨拶をしましょうか?」
『うん!』








あの日、公園での、最後の言葉

『るなとくるみちゃんは、ずっとずっと一生一緒だよ。』


この言葉が、忘れたくても忘れられない…
だって、大人になっても……

『あ!くるみ〜!待った?変な人に声かけられたらいつでも言ってね!』

いつもの怖い上目遣い。

「ううん…全然。」
『よかった〜!今日は何食べる?くるみの作る料理好き〜!もちろん、るなも手伝うからね!』
「うん。」
『寝るときはいつもみたいに、一緒に寝ようね。』

一生、一緒。

10/17/2023, 11:22:59 AM