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 その男は裕福な家庭で不自由なく育った。

 青年期に差し掛かり、新聞やニュースで多くの子供達が貧困状況にあり、助けを求めていることを知った。
 
「僕なら救える」

 優しい彼は、学校で社会学を学び貧困について学んだ、貧しい子供達を救うために。その後NGOで働きながら、たまの休日には子供に勉強を教えたりとボランティアに励んだ。稼いだお金は全て恵まれない子供達に寄付していた。彼はいつまでたっても貯金が貯まらなかったが満足していた。

 数年後、両親が亡くなった。彼に残った財産で貧しい子供達のために学校を建てた。建設だけで終わらず、そこで働く教師達のケア等、学校の存続にも積極的だった。彼は表彰され有名になったが世の中には、まだまだ苦しんでいる子供達がたくさん残っていた。

 子供だけではなかった。病気で苦しんでいる人はたくさんいる。特に臓器の提供が足りておらず、多くの疾病患者が亡くなっている。

「僕なら救える」

 彼は自分の腎臓を提供した。彼は再び表彰され有名になったが、世の中には、臓器提供を待つ多くの患者がいた。

「僕なら救える」

 彼は医師に自分に残っているすべての臓器を提供したいと話した。しかし、医師からは断られた。帰宅した彼は、自分の臓器を全て提供すると手紙に残して自死することを決めた。

3/28/2023, 1:47:13 AM