いしこころ

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ミーンミーンミーン
蝉の音が暑苦しい
屋根もないバス停のベンチで
足を組み直し腕時計を見た
待ち合わせ時間はとっくに過ぎている
知り合って15年
小学生の時から一緒で
親友というよりは戦友のような関係だ
定時に来たときは一度もない
バスツアーを一緒に行ったとき
パーキングエリアでトイレ休憩から
なかなか帰ってこなかったのは焦った
こめかみから汗が流れる
「あー潰す」
いつもヘラッと笑い
謝りながら来る顔を思い出しイライラしてきた
毎度、遅く来ることは知っていても
来るかもしれないと約束時間に来てしまう
道路は熱で景色が歪んで見える
布から出ている肌はチクチクと
太陽の光がさす
ふと、区役所に手紙を送ろう思った
***停に屋根をつけて下さい
スルメイカになりそうですと
忘れないよう携帯にメモしようと
ズボンのポケットを探った
「ごめん」
遠くの方から走ってくる人影が見えた
さっきの言葉を実行するため立ち上がった
目の前に来たときは
額に髪をつけ胸は忙しく上下していた
「遅れたの特に理由はないんだけど、許して」
笑いながら氷菓をだした
私の好きな檸檬味のものだ
人気もなくてなかなか売っていない氷菓
運がないと買えないものだ
無言で氷菓を受け取った
「バス来るのにあと15分あるね」
そう言いとなりに座った
私は袋から氷菓を出し口に入れた
シロップのように甘く
ほのかに香る檸檬がひんやりと口に広がる
「おいしい?」
へラリと笑い首を傾げている
「おいしい」
目を合わせず青い空に浮かぶ積乱雲を見ながら言った



#夏

6/28/2022, 2:30:50 PM