まって
君はいつだって、
真っ直ぐで、
前だけを向いて、歩いて行く。
そんな君は眩しくて。
必死に追いかけるけど、
君は余りに早いから、
その背中は、
遠くなっていく。
待って。
その一言が言えずに、
黙ってしまう。
伸ばし掛けた手を、
静かに下ろして、
そっと拳を握る。
だって。
日陰に息を潜め、
人の視線から隠れて生きる、
俺とは違って、
君は太陽の下を、
前を見据えて進むのに、
相応しい人だから。
君の柔らかな笑い声は、
風と共に俺の頬を掠め、
君の笑顔は、痛い程に、
俺の心に焼き付く。
君に憧れ、
想いを抱くことさえ、
烏滸がましいって、
分かってるのに。
心が君を求めて騒めくのを、
抑えられなくて。
待って。
遠くなっていく君の背中に、
声にならない声で、
そっと呟く。
君には届かない、
言葉にすらなれなかった願いと、
誰にも知られず、影と共に消えていく、
俺の想いと共に。
5/19/2025, 8:19:54 AM