(暗がりの中で)⚠︎︎欠損の表現あります。
目を開けても、広がるのは暗闇ばかりで。辺りを見渡そうとしても、体は全く起き上がらなかった。
遠くから近づいてくるサイレンの音を認識した時、一気に体温が下がった気がした。
目が慣れてくると、少しだけ暗闇の中からも情報を拾えるようになった。どうやら、今、オレがいるのは、瓦礫の中らしい、ということを理解する。
と、同時に体……特に足の辺りに瓦礫が積み上がっていることもわかった。
実は最初からわかっていたことだが、足の感覚がない。そのくせ、膝の当たりがやけに痛む。
切り傷程度で済んでいたらいいが、おそらくこの感じは足ごとどっかに吹き飛んでいる可能性が高い。
「だ、誰か人がっ……!!」
ほぼ真上から声が聞こえた。あぁ、もしかして見つけてくれたのだろうか。
「今、助けますからね……!!!」
目の前が急に明るくなる。どうしよう。助かっちまうな。
そこでオレの意識は途切れた。
…………
数日後、簡易的なプレハブのような建物の中で目覚めたオレは言葉を失った。
まず右足がなくなっていた。予想していたとはいえ、ショックはでかかった。
その後、周りを見渡すと、俺みたいに足がないやつや腕がないやつもちらほらいた。もちろん、言葉は出なかった。
「……。」
と、すぐ隣で息を飲む音が聞こえた。
「目覚めましたか……、すみません。きっと気が動転していると思います、が、今から事のあらましを説明するので、よく聞いてください。」
どうやらその人は、病院で働いていた医者らしく、オレに状況を説明してくれた。
曰く、戦争が始まったこと。
曰く、オレらの街の上空に飛行機が飛んできて、爆弾を落としていったこと。
曰く、オレが助かったのは奇跡だと言うこと。
理解はした、が、納得は出来ない。
「いや、有り得ねぇだろ……。」
いつ、この地獄は終わるのだろう。オレは目を閉じ考えた。あぁ、ここからが本当の暗がりの中なのだと、オレはこの時ようやく気がついた。
10/29/2022, 6:18:40 AM