題 エイプリールフール
「ねえねえ黒瀬」
きたっ!
僕は身構えて後ろを見た。
同じクラスの北条里奈が僕をイタズラっぽい眼差して見てる。
いや、正しくは普通の眼差しかもしれないけど、僕にとってはそうにしか見えないのだ。
だって、、、今日はエイプリールフール!!
去年は怖い数学の先生が激怒して呼んでるから来るようにって言われたし、一昨年は筆箱忘れたからって一式貸したら、凄く可愛いシールをペタべタはって返してきた。
こいつは俺にとって警戒相手以外の何者でもない!
今年もなにか企んでるに決まってる。
「何?」
僕はとりあえず当たり障りない返答をする。
「ちょっと、階段の下まで来てほしいんだけど・・・」
「・・・何?」
再び同じことを問う僕に、いいから、と、北条は僕の腕をとって一階の階段の下にあるスペースに連れて行く。
ここなら、あまり生徒もいないし、割と死角だから、大事な話があるときとか、カップルが密会したりする。
「あの、私、黒瀬のことが好きなんだけど・・・」
北条里奈がそう言った瞬間、僕は悟った。
今度はそういう作戦で来たか。
「あ、ふーん、そうなんだ」
とりあえず動揺していないように返す。
きっと、僕が慌てふためくのを楽しむつもりなんだろうから。
「私と付き合ってほしいの・・・」
僕の薄い反応にも関わらず、北条は、うつむいてそう言う。
絶対に今年は騙されない!!
「分かってるよ、全部お見通しだから!今日はエイプリールフールだろ。だからそういうふうに僕を騙そうとしてるんだろ!」
僕がそう言うと、北条は、びっくりしたように僕を見て、みるみる涙を盛り上がらせていった。
「ひどい、そんな風に思ってたの?私は本気で告白したのに」
北条の涙に、僕は動転してしまう。
「えっ、あっ、ごめんっ、本当だったの?だって毎年騙してたから・・・」
「さすがに告白は騙さないよ・・・」
北条の言葉に僕は頭を下げた。
「本当にごめん・・・」
「とか言うと思った?また騙されたね〜!」
北条の脳天気な声。
僕は頭を下げたまま黙る。
「もー、本当に毎年黒瀬はキレイに騙されてくれるなぁっ」
「ほーうーじょーうー?!」
僕のドスの聞いた低い声を聞いて、北条の全身がピクッと動く。
「もう絶対に許さないからな!!」
僕の顔に恐れをなした北条は逃げ出す。
僕は北条を学校中追い回して、食堂のパン2個を奢ってもらうことで手を打った。
これで来年はこりてくれるんといいんだけど。
というか、来年からは絶対に絶対に絶対に騙されないぞ!!
4/1/2024, 11:35:40 AM