未知亜

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ㅤ本のページをめくるうちに、空が白み始めていた。少し張った首にわたしは手を当てる。揉みながら左右に倒すと、ぽきりと乾いた音がした。物語の世界を旅するうちに、わたしはひとつ歳を取っている。
ㅤ昨夜ようやく迎えた本は、想像以上の秀逸さだった。これまで読んできたこの作者の史上最高を更新している。この世のすべてに感謝したい。
ㅤストーブを消して、窓を細く開ける。ひんやりした空気が頬を刺す。そんなことすら心地好かった。眠るのが勿体ない。初見の余韻は今だけなのだ。
ㅤ静かで美しいこの夜明けを、わたしは大きく呼吸した。


『静かな夜明け』

※個人的なことで恐縮ですが本日誕生日でした。
ㅤ数多の物語を読むことの出来る倖せな世界で
ㅤまた一年。

2/6/2025, 12:41:34 PM