ちどり

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小さい頃、流れ星が怖かった。
綺麗だが怖かったのだ。

それもこれも、流れ星のことを聞いた私に悪戯心で脅してきた父が原因だった。

「流れ星は宇宙からの落とし物なんだよ。時々どこかに落ちてくることもあるんだ。もし、頭に落ちてきたら……」

そう言って、父は拳で自分の頭をポカッと殴り、その場で倒れてみせた。

怖がりだった私は、それだけで青ざめてしまったという。
もちろん父は母に叱られ、母によってフォローはされたが、幼子のインプット力は侮れない。

後日、流星群の観測に誘われて、一緒に見に行った友達は無邪気に目を輝かせてお願い事をしていた。
私は祈る友達を尻目に母の袖を掴み、とてもお願い事をする気にはなれなかった。

流れる光の筋の美しさに目を取られながらも「自分の上に降ってきたらどうしよう」という心配の方が勝ってしまったのだ。

大人になった今でも心のどこかで恐怖はある。
しかしそんな私でも人生で一度だけ、流れ星に願い事をしたことがある。

流れ星のような先輩に出会ったからだ。

先輩の印象は、綺麗でかっこよくて少し怖い。
その感覚は流れ星を見るときに似ていたが、もっと近くでいたいとさえ思った。

暇さえあれば先輩の姿を探し、先輩もそんな私を見て気に入ってくれたのか、よく可愛がってくれていた。

その先輩がある日、「プラネタリウムに行きたい」と言うのでついて行ったことがある。

擬似的な夜空を走る流れ星を見たが、プラネタリウムなら落ちてこないので安心して見ていられた。

説明を聞きながらいくつか光の筋見送っていると、ふと一瞬で消えゆく姿に一抹の寂しさを感じた。

だからこっそりお願いしたのだ。
流れ星が「ずっと見れますように」と。

本物でなくても効力があるのかは謎だ。

けれど流れ星のような先輩は、数年経った今でも私の前で輝き続けている。



「隕石までとは願わずとも」
⊕流れ星に願いを

4/26/2024, 3:39:47 AM