山梨太郎は商店街の交差点を左に曲がった。髭は無造作に生え、コートのポッケに手を突っ込んで歩き、偶にスマホの地図で現在地を確認する。
太郎は家の最寄駅から十駅東にある大学に行った後の帰りだった。ただ我が学舎に通学したわけではない。ミステリーサークルの仲間と話すためだ。太郎らは本の虫なので結局ボーリングやカラオケより部室に屯する方が心地が良いのだ。そのついでにいつも講義を立ち聞きして帰るのだが、今日はそんな気分じゃなかった。
数時間、推理小説(ミステリ)サークル活動時に佐々木が声をかけて来た。
活動といっても各々好きなミステリ小説を読んだり執筆したり感想文を書いたりしているだけなので、することのない太郎と佐々木が話し出しても気にも止めなかった。
佐々木は鼻筋はよく通り、身長も高く、ケチな性格という事を伏せて、スーツを着こなせば好青年といっても誰も否定しないだろう。
「なぁなぁ、名古屋療養児殺人事件って知ってる?」
「名古屋市で介護が必要だった子どもが殺された事件だろう?被害者は6歳。家に入った痕跡はあるものの一切手がかりがなく捜査が打ち切られた。でも、十年以上前の話だろう」
「それが、最近そのこの親が再調査を求める派の人を集めて集団起訴を起こそうとしてるだって」
「そうなのか。それがどうした?」
「これ、自分たちなりに推理してみたくない?ある程度の事は耳にタコができるほどニュースでやってただろ。」
太郎は確かにほとんどの情報を知っていたが、実際に起こった事件は小説と違い面白くないと思っており、乗り気じゃない。
確かな情報かもわからないし、ちゃんとしたトリックがある可能性なんてゼロに等しい。
太郎は適当に返事をした。
「被害者の周りの大人は全員アリバイがあったんだろう?しかし、警察に通報した父親は警察である友人に直接電話をした。
後ほど、「そっちの方が駆けつけてくれるのが早いと思った」と言っているが、父親の友人は会社でもかなり地位が高かった。それに、LINEとは別に会話記録が残らないアプリで二人繋がっていたという点からもその警官と父親がグルの可能性は高いんじゃないか?被害者も障害があったそうだし、耐えられなかったのかもしれない。」
「なるほど、アンタそう推理するんだ。」
「なんだよ偉そうに」
そう言った具合に太郎と佐々木が言い争っている。
俺は、二人に向かってこういった。
「お前ら、付き合っちまえよ」
太郎は軽く顔が赤くなる。佐々木は長い髪を手で解かしながら興味なさげに却下ぁ〜と発する。
太郎は女のクセにと佐々木を睨みつけるが全く効力はない。
その時、太郎はミステリーサークルのリーダに呼ばれる。太郎は返事をして席をたった。
「君は太郎くん?ヒトシ君?佐々木さん?どちらにしろ話がある。」
太郎は意味がわからないとでもいうような反応を見せたがグッと飲み込んだ。自分たちの違いがわからないなんて。
「正直にいうけれど、ずっと一人で話している君と二人きりでこの部室にいたら気が狂いそうになるよ。多重人格者というのは分かるけれど、作業している時に君がいるとミステリーが嫌いになりそうだ。本日限りでもうこのサークルは閉鎖。前からも教授に言われていたんだ。
二人だけでのサークル活動には限界があるって。とにかく明日から来ないでくれ。連絡もできればして来ないで。じゃあ。」
リーダーはしっしっと手で出ていけのポーズをとる。
太郎は一人で部室を出た。
「あんな事を言うなんて最低ね」
「アイツなんかほっとけほっとけ。」
太郎の中で二つの声が響いた
お題「友達」
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たった数行だと何やりたいのか分からないですよね。
騙そうとしたんですが、短くするのはめっちゃ難しい。
どんでん返しって少しずつ少しずつ騙されていくんもんね。一度長編書いてみたいけど、どれくらいで読者は騙されて勘付くのかが知りたくてしょうがないです。
簡単なコメント機能も付いたらいいと思うんだけどな。
もし良いと思ったらもっと読みたいで教えてください。
10/25/2024, 11:59:34 AM