伸びた餅のちぎれた部分

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 桜が満開の春、春休みの終わり。
花びらが一枚窓から落ちる。
自室には一人、部屋の主がいた。
あたりには中途半端に黒く塗りつぶされたキャンバスの山。
パレットから色をとる。
イーゼルに乗っている描きかけの絵に、
黒い絵の具を上塗りした。
(あーあ、またやっちゃった。)
頭の中で何回も、おととい言われた言葉を反芻する。
『下手くそだね。』
ただその一言だけで、すっかり描けなくなってしまった。
何を描いても、失敗作に見えてしまって。
「はぁ……はは、やめりゃいいのにね、馬鹿みたい。」
私はため息混じりに自嘲した。

3/23/2023, 7:16:32 AM