綺麗にラッピングされた箱。
「開けないの?」
首を傾げて、弟が問う。何度目かのやりとりかも忘れたそれに曖昧な返事を返しながら、それでも箱を開けられずにいた。
今朝早く、玄関の前に置いてあった箱は、送り主が誰かを書いてはいない。ただ、薄紅色の可愛らしいリボンが、送り主が誰かを静かに伝えていた。
「開けないの?」
弟が繰り返す。このやりとりにも飽きてきたようで、欠伸をひとつしながら、テーブルの上に置かれた箱に手を伸ばした。
「開けないなら、開けるよ」
「ちょっと、待って……!」
慌ててそれを止め、溜息を溢す。仕方がないと、リボンに手をかけた。
リボンを解く。殊更丁寧にラッピングを剥がし、中の箱の蓋をゆっくりと開けていく。
「――あ」
「へぇ、可愛いじゃん」
弟が笑う。
それをどこか遠くに聞きながら、恐る恐る中のそれを取り出した。
「――可愛い」
思わず呟く。
華奢な白の陶器で出来たそれは、一匹の黒猫が描かれた可愛らしいティーカップだった。
11/13/2025, 8:21:37 AM