『善悪』
世の中結局善悪の二つしかないんだよね。
「今っきゅ、必殺技をお見舞いするっきゅー!」
「わかった、任せて」
宙に浮く喋る不思議生物の指示に従って、私の必殺技を敵にお見舞いする。
「やったっきゅね、さすが正義の魔法少女っきゅ」
敵が完全に消滅したことを確認して、安堵のため息をつく。
私は普通の善良な女の子だった。
でもある日この不思議生物に、正義の魔法少女になって悪と戦うようにとお願いされたのだ。
戦うことは怖かったけど、悪い奴をやっつけないと私たちのまちが壊されちゃったり、命を奪われちゃうそうだからやるしかない。
そんなこんなで私は正義の魔法少女をやっている。
「さぁ、次の悪い奴を倒しに行くっきゅー」
「もう、休む暇もないじゃない」
魔法少女はぶつくさ言いながらも、元々の善良性で指示に従ってくれる。
(やはり、善人は扱いやすくて助かるきゅ)
こうして力を与えても、裏切る心配もなく敵を倒してくれるからありがたい限りだ。
(これでまた実験がはかどるきゅ)
神がいくら敵を送り出して実験を阻止しようとしても、こちらには魔法少女がいる。
このまちを、ワタシたちの作った実験場を守るために精々その命を有意義に使わせて貰おう。
どうせ死ななくても、他の実験にまた使えば良いだけだしね。
不思議生物は謎めいた笑みを浮かべたが、それに気付くひとは誰もいなかった。
4/26/2024, 10:05:20 PM