【逆光】
貴方の顔、貴方の表情、それらを私が思い出すことはできない。壁一面に埋め込まれた大きな窓の前、真っ白い小さな部屋の中で、貴方はいつも絵を描いていた。
窓から差し込む強い日の光が貴方を眩しいほどに照らし出して、私からは貴方の姿はシルエットでしかほとんど見えない。それでも貴方が一心にキャンパスへと筆を滑らせる姿を眺めていたくて、私は貴方の元へと足を運んでいた。
貴方が私の前から姿を消してしまった今、私に思い出せるのは逆光の中に佇む貴方の朧な面影と、むせ返るほどに色濃い絵の具の香りだけだった。
(それでも貴方を、愛しています)
1/24/2024, 9:49:03 PM