特別な夜
「もしもし先輩?こんばんは!」
『こんばんは』
「先輩の部屋って窓ありましたよね」
『あるよ』
「ちょっと空を見てください!」
『あのね、今何時か分かる?』
「二時ですね!」
『深夜のね。大変元気があってよろしい。早く寝なさい。明日は小テストがあるんだって言ってたよね?それも昼から。眠くなっても知らないよ?』
「うぐっ…そうですけどぉ」
『再テストでひーひー言いたく無かったら早く寝な?』
「先輩あれですか、一夜漬けという単語に縁が無いタイプの人間ですか。はー、そうですか」
『まぁ、そうだけど』
「裏切者ぉ!」
『いつから僕が仲間だと錯覚していた?』
「くそぅ。ってそうじゃないんですよ!外!空!見て!ください!」
『えぇ』
「勉強に疲れた哀れな後輩の一瞬の息抜きに付き合ってくれても良いじゃないですか!」
『仕方ないなぁ』
「星!綺麗ですよね!」
『…そうだね。うん。よく見える』
「天気予報では曇りってあったんですけど、見事にはずれたんです」
『そうなんだ』
「天気予報もこういうはずれ方だと、逆に当たり感ありません?」
『確かに』
「冬の大三角形も見えますよ!どこにあるのか分かりませんけど」
『分かんないんだ』
「夜空に三角が多すぎなのが悪いんですよ!先輩は星座分かります?」
『ある程度はね』
「凄い!さすが先輩!略してさす先!」
『そんなさすおにみたいに』
「さす先!さす先!」
『はいはい』
「こいぬ座を作った奴を質問責めすることが私の夢なんです!」
『さてはだいぶ脳みそ死にかけてるね君』
「こんなに起きてたのは久しぶりですよ…ふぁ」
『寝なよ』
「むぅ…あの」
『ん?』
「あの…先輩」
『なぁに?』
「……眠く、なりました?眠れそうですか?」
『ちょっとはね』
「ちょっとかぁ…もうひと息!」
『凄く眠くなった気がする』
「ホントですか!やった!」
『眠くなったことだし、このまま僕は寝ることにするよ。おやすみ』
「おやすみなさい、良い夢を」
電話を切って、再度空を見上げる
少しぼやけた満天の星、とても綺麗だ
最近夢見が悪くて寝付けないのだと零したからか
濃くなるばかりの隈を心配したからか
随分斬新な寝かしつけ方だ
眠気を吹き飛ばしてしまいそうな程明るく元気な声だけど、なかなかどうして眠くなる
良い感じに瞼が落ちて、意識が重くなる
おやすみ、良い夜をありがとう
そして良い夢を
《キャスト》
・後輩
テストはギリギリアウトだった
・先輩
後日勉強会を開いた
1/21/2024, 12:07:34 PM