足元で猫の鳴き声がした気がして、読んでいた本から目を離す。
しかし、足元には何も居ない。
当然だ、あの子はもう居ないのだから。
しょぼついた目を本に戻して、どこまで読んだんだっけと一行目から目を通していると、また。
また、聞こえてくる。
成仏できていないのか、と仏壇下に設けたあの子の祭壇に立て掛けられた遺影を一瞥。ちゅーるか。
最期の方は好物も食べることができなかったものなあ、と祭壇に供えていた、ちゅーるの開け口をピッと破いて小皿に出してやる。
いっぱい食えよ、と祭壇に皿を置いて手を合わせていると、鳴き声がさっきよりも激しくなった。
よくよく聞いてみれば、あの子の声じゃない。
あの子の声は、もっと低かった、こんな鈴を転がしたような鳴き声ではなかった。
もしやと思い、畳に耳を押し付ける。
下に、いるっ。
テーマ「耳を澄ますと」
5/5/2024, 4:40:18 AM