作家志望の高校生

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彼は、僕のことを誰よりも知っている。
下手したら、本人である僕より詳しいかもしれない。
なくし物をした時、彼に聞けば大体見つかる。
遅刻しそうな時、都合良くお母さんに車で送ってもらう途中の彼が乗せていってくれる。
当然だ。彼は僕を、四六時中ずっと見ているのだから。
クラスは一緒だから、授業は当然彼の視線を浴びながら受けている。ノートなんか取らなくたって、僕のことを見ている彼が勝手に貸してくれる。
帰ってからも、隣にある彼の家の窓からであったり、部屋の至る所に仕込まれたカメラであったりでずっと見ている。
誕生日に貰ったぬいぐるみの目、いつの間にかペン立てに増えていたボールペン、ひっそりすり替えられていたコンセントの拡張プラグ。
全部カメラが入っていたのを知った上で、放置している。
理由は単純だ。
彼に見られているのが、嬉しいのだ。
彼は、顔良し家良し性格良しの三拍子。おまけに高身長でスタイルも良い。
それだけの要素が揃っているのだから当たり前だが、鬼のようにモテるのだ。
待ち合わせに来ないと思ったら、街中で逆ナンに遭って止められていたことなんて数知れず。
校舎裏を見れば大抵告白されていて、それを困ったような笑みでやんわり断っている。
そんな彼が、冴えない、どちらかといえば陰気な僕に、これだけの執着を抱いているのだ。
こんなに優れた人間なのに、自分しか眼中にないその異様さへ、ある種優越感を抱いていたのかもしれない。
彼の一番は僕でありたいし、僕の一番はもちろん彼だ。
誰より長く、ずっと一緒にいる。顔や性格なんて浅い所を見ている人間になんて、絶対に取られたくない。
だから、盗聴器も隠しカメラも、着替え中の隠し撮りも、全部見て見ぬふりをしている。
それらは全て彼の僕に対する執着の現れであり、愛しいものなのだ。
こんなことを言っている僕が一番、誰より、彼でさえ敵わないほど、ずっと抱き続けて拗れた執着を持っているに違いない。

テーマ:誰よりも、ずっと

4/10/2026, 7:01:09 AM