NoName

Open App

「太陽」

何もかも嫌になって動きたくない。太陽のせいだ。直接見るわけにはいかないので、くっきりとした影と日向の境目を睨む。この線から一歩も出たくない。

しかし冷蔵庫の中は空っぽで毎日ちまちまと作っていた麦茶のパックもなくなった。スーパーに行こうにも、行くには炎天下に野ざらしの車に乗らなければならない。

「こんにちは」

太陽が傾いてから、きゅうりとトマトが来た。と言ったら失礼か。ご近所さんの1人が採れたての野菜を届けてくれる。いろんな人が届けてくれるものだから、きゅうりとトマトはしばらく買っていない。

遺品整理が大変だというのは聞いていたが、連日の暑さで大変さは何乗にも感じられる。しかし、父の残した数多くの道具類は価値のわかる人には貴重なもののようで、こんなものまで持っていってくれるのかと驚く。

暑さに負けて放置した段ボールの山。明日こそは束ねよう。

とりあえず目につかないようにしておけば満足だったのだろう。物置の中の状態ときたら…電話会社の請求書、給与明細、叔母からの手紙、使いかけの軟膏、顔そり用のカミソリ、新品の刷毛、古い下着、父の道具類、我が家からの手紙もあった。

不可解な物たちは燃えるゴミ7袋、燃えないゴミ1袋にまとまった。正午まで作業しシャワーを浴びる。死にたくないから午後は休む。本を読んで、うとうとして、高校野球をみる。

明日も太陽は容赦なく照りつけるだろう。頑張ろう。

8/7/2024, 9:51:13 AM