霜月 朔(創作)

Open App

記録



ひび割れた硝子の様な、
静かな深夜。
月の光は、ただ冷たい。

机上のノートに、
滲むインク。
記された名前は、
いつも同じ。

指先でなぞる、
貴方の名前。
貴方への想いは、
言葉になれず、露と消え、
決して、響かない。 

夢の中。
夜の闇に滲む横顔。
光と影の狭間に咲く、
貴方の微笑み。

決して触れられない。
それが、俺を、
深く切り裂いていく。
貴方の微笑みは、
他の誰かの物だから。

朝が来れば、消えていく、
名もなき恋の断片たち。
記憶の隅に沈めて、
幾度も記すのに、
言葉は貴方へ届かない。
インクが涙のように滲むだけ。

硝子の破片を抱き締めて、
今日もただ記すだけ。
…届かぬままの言葉たちを。
記録という檻の中に。

2/27/2025, 7:19:53 AM