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こんなに熱狂的にハマるなんて思ってなかった 。

ライブの雰囲気も 、 観客の声援も 、 何もかも
身体の芯から震える迫力だった 。

だから俺も 、 その熱に流されてみたくなった 。



いつもと同じ作業 。
掘って 、 運んで 、 また掘って 。

ただ嫌ではなかった 。
無駄に体力はあったから耐えられたし 、
あまり人と関わらなくて良いから気が楽だった 。

けれどそれをずっと続けているうちに 、
少し飽きてしまって 。
だから 、 業務外時間に浸れる何かが欲しくて 。
携帯で流してみた曲に 、 心を奪われた 。

ロックだけど 、 和風 。
和風だけど 、 すごくかっこいい 。

強い声とかっこいいギター 。
そこに合わさる琴もすごくいい 。

こんなにかっこいい曲を 、 バンドを 、
今まで知らなかったなんて 。

俺はすぐにハマってしまって 、
その日は夜通しそのバンドの曲を聴いた 。

おかげで次の日は寝不足だったけれど 、
心做しか作業は捗った …… 気がする 。
励まされた 、 ような 。

いつか 、 あの人たちのライブに行ってみたい 。


なんてことを考えてたら 、 職場の先輩から
一緒に行かないかと誘われた 。
人と話すのはやっぱり緊張した …… けれど 、
行きたい気持ちが強かった 。

「 い 、 いきたい …… です ……… !! 」


「 す …………… すごい ……………… 」

言葉を失った 。
たくさんの観客の先に 、 あの人たちはいた 。

やがてライブが始まって 、
観客の声が大きくなっていって 。
でもそれに負けないぐらい 、
あの人たちの声は強く響いていた 。

声が枯れてしまうのではと心配するほどに 。

携帯でよく聴いたその曲を生で聴けるなんて ……
覚えていないけれど 、 その時の俺はもしかしたら
泣いていたのかもしれない 。


こんなに熱狂的にハマるなんて思ってなかった 。

ライブの雰囲気も 、 観客の声援も 、 何もかも
身体の芯から震える迫力だった 。

だから俺も 、 その熱に流されてみたくなった 。


「 っうおおおおおおおおっ !!!!!! 」


すごく楽しかった ………… けれど 。
大声を出すのは 、 今になってすごく
恥ずかしいことに思えてきた 。

あの時 、 周りの人もびっくりしていたし 。
これからは 、 控えようかな ………

それに ……… 普段からあんまり大声を
出さないものだから 、 声が枯れてしまった 。
先輩にも笑われた 。


けれど 、 この枯れた声は思い出だ 。
ひょっとしたら大したことの無いものと
思うかもしれないけれど 、 俺にとっては
すごく大切な思い出になった 。

またライブに行きたいな 。



- 声が枯れるまで
- 黒立葵

10/21/2023, 2:26:46 PM