小絲さなこ

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「切り取り線」


「ありがとう。気持ちは嬉しいけど、君のことは……その……俺、好きな子いるから。ごめん」

わかっていた。
わかっていた、のに。


先輩がそういう目で見ているのは、私ではなく、あの子。
そんなこと、見ていたから知ってる。

愛しいものを見るような表情、切なそうな苦しそうな先輩の視線の先には、いつもあの子しかいない。

私なら、先輩にあんな辛そうな顔をさせないのに。
そんな目であの子を見ないで。

あの子は、先輩の気持ちに全然気付いていない。
そのことに苛立って仕方ない。
あの子は何も悪いことをしていないのに。

自分の気持ちに区切りをつけなければ、自分がどんどん嫌な子になってしまう気がした。


先輩は私のことをなんとも思ってない。

それを先輩から聞きたかった。

そうでもしないと、諦められないほど、私は先輩のことが、すごく、すごく、好きだったのだ。自覚しているよりも遥かに。



ごめんなさい先輩、私の告白は、きっと自己満足でしかなかったんです。
ありがとう先輩、ちゃんとフってくれて。


さようなら、初めての恋。




────ありがとう、ごめんね

12/9/2024, 7:37:39 AM