ほろ

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塾だから、と親友にフラれてしまった。

今日だけ、私たちの通学路にあるコンビニで中華まんが10%引きのセールをやっているというのに。これを逃したら、冬の風物詩である『中華まんを頬張る女子』をやれないかもしれないのに。一瞬の青春より、未来に繋がる塾の方が大事らしい。

仕方がないので、1人でコンビニに寄る。10%引きの効果か、店内はいつもより少し混んでいた。
何にしようかなぁ、とケースを覗き込む。しかし、そこには白もオレンジも見当たらない。ちら、とケースの上を見る。確かに、中華まんの写真が付いている。このケースで間違いない。
「あの、中華まんは……」
思い切って、おでんを仕込んでいた店員さんに声をかけてみる。店員さんは、何度も同じ質問をされたのか、私を一瞬だけ見て「売り切れです」と簡潔に述べた。
マジか。あと一歩遅かった。我が親友よ、あなたにフラれる時間さえなければ間に合っていたかもしれないぞ。
この場にいない親友に恨みごとを呟きながら、渋々ホットココアだけ買ってコンビニを出る。

「遅い」

帰ろうと右に曲がったら、鼻を赤くした親友がいた。レジ袋を引っさげて。
「え?」
「10%引き、今日でしょ」
私にレジ袋を渡しながら言う。
「え、うん。いや、なんで? 塾行ったんじゃないの?」
「今日塾休みだけど」
「は? つまり?」
「2人でいつも通り行ったら間に合わないと思ったから、先買っておいた」
袋の中には、中華まんが2つ。
「神じゃん」
「知ってる」
1つを手に取り、袋ごと親友に返す。
親友も中華まんを手に取って、さっさと中身を取り出した。
「やっぱり、一緒じゃないとダメだね」
「ね。美味しさ半減だわ」
中華まんを頬張りながら歩く。
ココアは2人で半分ずつ飲んだ。冬の帰り道はこうでなければ。

12/18/2023, 3:01:00 PM