ゆきんこ

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 昔から物を捨てられない性分だった。
 壊れたおもちゃ、どこのものか分からない紙袋、死んだ犬の首輪に何かわからない落書きをした紙まで、どこからどう見てもいらないであろうものでも捨てられずに取っておいてしまう。……でも、こんなものまで残してしまうだなんて。

 元彼にこっぴどく振られたのが3日前。贔屓目でみてもかなり仲のいいカップルだったと思う。友達にもお似合いだって言ってもらえたし、お互いに手に取るように相手の気持ちがわかった。
 なのに、突然、なんの前置きもなく別れを告げられた。なんで?なんで?どうして?何を聞いても彼は「ごめん」と返事をしただけだった。
 別れてからはLINEに既読すらつかない。そうなってやっと捨てられたんだと自覚し始めた。
 こうなっちゃったらもう、彼に貰ったものは全部捨てよう。そう思い立って仕分けを始めたはいいものの。
 彼にもらった靴、お揃いで買ったコップ、誕プレにくれた大好きなキャラのキーホルダー……全部が全部大好きで大切な思い出が甦ってきて捨てられない。しっかりと分別していたはずなのにいつの間にか「必要」の箱がぱんぱんに詰まっていた。気がつけば結局全部「必要」の箱に詰めて仕舞っていた。
 そこまでしてようやく私は物だけじゃなくて彼への気持ちすらも捨てられず大切に仕舞ってしまったのだと気がついた。
 ……こんなことになるのなら、ものを捨てられるように特訓しておくべきだった。今更そんなことを考えてももう、後の祭り。きっと私はこれからも彼への気持ちをぶら下げたまま生きていくのだろう。

8/17/2023, 3:08:11 PM