リラ

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【夢物語】
お題:理想郷

 ここはあなたの望みがなんでも叶う場所。大金持ちになりたい、好きな人と相思相愛になりたい、テストでいい点を取りたい、大きな願いから小さな願いまでなんでも叶います。そんな誘い文句の睡眠屋というお店がある。その店は名前の通りお客さんとして来た人を眠らせる場所だ。ただ眠らせるだけでなく、望む夢を見られるという。それがほんとかどうかは知らないが大層人気で、なかなか予約も取れないらしい。
 パチリ、目が覚めた感覚がした。けれど見たことのない景色が目前に広がっている。淡い緑をした芝生に青やピンク、黄色など様々な花が広がっている。ネモフィラ、コスモス、パンジー、キキョウと咲く季節がバラバラなものが一緒に咲いているのも気になった。もっと近くで見ようとした時遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえた、気がした。数秒後、近くから声が聞こえた。振り向くと大好きなあの子はそこにはいた。
 私に笑いかけてくるあの子にすぐそばにあったナイフを突き刺す。こんなのあの子じゃない。血を流すはずのあの子はサラサラと最初からいなかったかのように消えていった。最初からあった違和感はもう確信に変わっていた。ここは夢の中。私はあの子に嫌われているから、私に笑いかけてくることなんてない。手に持っていたナイフで自分の首を切る。
 ハッとして夢から目が覚めた。首を切った感覚がまだ残っている気がする。なんてひどい悪夢だったのだろう。まるでユートピア。いや、ただの夢物語だったのかもしれない。

10/31/2023, 2:25:04 PM