冬至。

Open App

             びーえるだとしたら…?



ぴんぽーん。
店内に響き渡る軽快な来店音。
顔に影が掛かると同時に声を掛けられる。
「ひさしぶり」
最後に会ったのはいつだったか思い出せないその顔は思い出のままふにゃりと笑う。
変わらな過ぎて笑えてくる。
「なに笑ってんの?」
ちょっと困り顔でおれの目の前の席に荷物を置きながら笑い返される。
「いや、変わらないなって思って」
「そっちこそ」
目を細めて笑う。
その笑い方。
相変わらず好きだなぁって思う。
「まぁ座りなよ」
そう言ったらジッとおれの隣の席を見つめて。
「オレそこに座る?」
指を差しながら真剣な顔で返してきた。
「いやいやいや、何でだよ。そっち空いてるからそこに座りなよ」
真面目な顔で何言っちゃってんの。
咄嗟のことで半笑いになりながら目の前の席に案内する。
「そぉ?」
残念そうに向かいの席に素直に収まる。
「オレはお前の隣りに座りたかったのにな」
「男2人で並んで座ってたらおかしいだろ」
笑いながら返すけど目の前のこいつは釈然としない様子で見つめてくる。
「オレは気にしないけどなぁ」
「おれは気にする」
何年経ってもテンポが合わない。
でもこれがおれとこいつの日常だった。
「本当久しぶりな。元気にしてた?」
こうして2人で会うのも何年振りだろう。
どこに行くのも何をするのも一緒なおれらだったけど、高校卒業と同時に進路が分かれてそれっきり。
こいつが遠方の大学に進学したのもある。
でも連絡しようと思えばいくらでも出来た。
あえてそうしなかったのはおれだ。
こいつからの連絡も次第に途絶えた。
あんなにいっぱいこいつは送ってくれてたのにな。
「まさかアイツらが結婚するなんてな」
物思いにふけってたら突然現実に戻される。
「そうだな。あんなに喧嘩して別れる別れないを繰り返してたのに」
今回こうして久しぶりに会っているのもこれが理由だった。
いつもつるんでる友達の1人がずっと付き合ってたこれまた同級生と結婚するって事でその結婚式のためにこいつは帰って来てるのだった。
「それにしてもさ。まさかここがファミレスになるなんてな、思いもしなかったよ」
そう笑いかけられておれも釣られて笑う。
そうここは元々は公園と言うには少し寂しい作りの空き地でよくこいつと遊んでた場所だった。
こいつが居なくなってファミレスが建つことが決まったその時にひとりこっそりと覗きに来たことがある。
無くなってしまうこの想い出の場所に立ち尽くしたあの日。
その場所に今こいつと共にいる。
「本当だよな。おれらの想い出の地」
冗談めかして笑い掛けるけど目の前のこいつは薄っすらと笑って。
「でもまたここでお前とたくさん会えるね」
そう言った。
またここで、たくさん。
そう聞こえた。
言われた意味を咀嚼してる間に重ねて発されたその言葉は、
「オレ、こっちに転勤になったよ。帰ってくるんだ」
真っ直ぐにおれに刺さる。
思わず目を見開いて何も言えずにただ目の前のこいつを見つめることしか出来なかった。
「だから…」
その後に続いた言葉が遠く聞こえた。
そんな都合のいい展開なんてあるはずないんだ。



                 (この場所で)

2/12/2026, 9:42:06 AM