中学生の頃。優等生だった私は、悪いことに憧れていた。クラスのちょっと派手な子。同じバンドが好きだった彼女と一緒に、親に内緒でライブに行ったり、深夜にこっそりコンビニに行ったりしていた。
ある日の放課後、彼女がピアッサーを2つ用意していた。私に片方渡してきて、「ここに開けて欲しいの」と茶髪の髪を掻き分けて、印のついた耳を差し出す。「軟骨だよ!?痛くないの?」と尋ねると「ここならパパに怒られないから」と笑う彼女は眩しくて、どこか羨ましかった。
バチンッ
赤くなった耳を鏡で確認しながら「かわいい♡」と喜ぶ彼女。それだけで、私はこの子の友達でよかったなと思うのだ。
「〇〇も開けよーよ!」そう言って彼女は冗談めかして笑う。「うん。開けたい。」普段学校では優等生の私がそんなことを言うとは思っていなかったのか、驚いたように目を見開き、「いーの?」と尋ねる彼女。「うん。でも、軟骨は怖いから耳たぶがいい。」そう言って私は髪を耳にかける。
バチンッ
大人になって再会した彼女は黒髪でちゃんと社会人をしていた。私が開けた軟骨のピアスホールは塞がっていて、なんだか寂しいような、悔しいような、モヤモヤとした感情が胸につっかかる。塞がりかけた耳たぶのピアスホールを撫でて、遠い青春に想いを馳せる。
7/15/2025, 6:09:55 PM