星川 昏

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 こたつにみかん。
ちょっと、私の愛しい人。
そのみかん、むいてくれない?
自分では嫌よ、こたつから手を出さなければならないじゃない。それはいやよ、寒いもの。
 貴方は万年暖かいのだから、いいじゃない。
私の代わりに、みかんをむいてくれても。
私、万年手が冷たいの。冷え性なの。
 嫌ね、愛しい人。
私、優しくないわ。今もこうして、貴方にみかんをむかせている。酷い人なの、私。
 おかしいわね、愛しい人。それが自分の特権だと、笑っていられるなんて、お気楽な人。
いつか騙されるわ。私みたいな、酷い人に。
 嫌ね、愛しい人。
そんなに優しくされてしまったら、溶けてしまうわ。雪みたいに。いなくなるわ、それは嫌でしょう?
 そうよね、愛しい人。貴方は私が好きだものね。
いつまでも、そのまま。雪を溶かす暖かな太陽でいてね。愛しい人。好きよ、愛しい人。

12/29/2024, 3:18:14 PM