ストック

Open App

私の前を歩く貴方の真っ直ぐな視線を追ってみた。
視線の先には、この上なく優しい世界が見えた。
素敵だな、と私はしばらくその美しい景色を眺めていた。

でも、気づいてしまった。
その優しい世界は、ずっとずっと遠くにあった。
そしてその世界と私たちの間には、無数の棘が生えた茨が道を塞いでいる。
目を落とすと、先を歩く貴方の足には茨が絡みつき、血が流れている。
貴方はそっと茨を掴むと優しく足から外した。手も真っ赤になってしまった。

「この道を進むのは怖いかい?僕が道を作るから、安心してついてくるといい」
痛いはずなのに、貴方はそんな素振りも見せず、私に優しく微笑んだ。

「ううん。私は貴方の隣を歩く」
止めようとする貴方を遮り、私は隣に並ぶ。足に棘が刺さる。痛い。
痛いのは嫌だけど、でも、貴方だけが傷つくのはもっと嫌だ。

私は貴方の手を握る。
「一緒に歩いていこう、見つめる先がどんなに遠くても」

7/19/2023, 11:05:01 AM