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君の目を見つめると…。
うーん(゜゜)
物語…。

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今日も今日とて屋上に入り浸る。
隣にいる彼女は、ぼんやりと手すりに肘をつき何かを見ている。

グラウンドで練習する野球部でも見ているのだろうか。或いは、ゴチャゴチャと姦しい街並みに何か気になるものでも見つけたのだろうか。或いは、空の向こうに思いを馳せたりしているのだろうか。

彼女は一体、何を見ているのだろう。

眼鏡の奥に隠された彼女の目を横からジッと見つめる。

長いまつ毛の影が落ちる瞳には、黒曜石のような冷たい光がある。

物事の核心を捉えるその瞳は、世界をどの様に写しているのだろうか。

綺麗なものはより綺麗に映るのだろうか。
醜いものはより醜く見えるのだろうか。

それらを見て彼女は一体何を思うのだろうか。

そんな事を思っていると、彼女がこちらを向いた。
視線が空中でかち合う。
彼女は一瞬キョトンとした後、悠然とした笑みを浮かべた。

「ねぇ、知ってる?犬や猫の目をジッと見つめることは喧嘩を売っていることと同義なのよ」

気の短い──私もまた然り。
そう言った彼女の声や口元は朗らかだが、肝心の目は本気だ。
絶対零度の瞳に動揺する俺が写っている。
ありえないことだが、彼女の目を見ていると、研ぎ澄まされた刃が喉元に突きつけられているような気がする。
蛇に睨まれた蛙とはこの事だろうか。
四面楚歌って気もしてきた。

「ごめんっ」

「冗談よ」

そう言って彼女はカラカラと笑ったが、あの目は本気だった──と思う。
あれが、演技だとしたら…。
多分、女優になれんじゃねぇかな?

4/6/2024, 1:39:15 PM