【空恋】
もう何年空を見ていないだろう。
あの日、世界は未知なる生物によって乗っ取られた。
それにより多くの命が奪われた。
運良く生き残った人類は地下に作られた核シェルターに避難し、一命を取り留めた。
しかし避難しただけではいつも通りの生活は困難だ。
そこで人類は新たに生活できる場所を作り始めた。
家、学校、店…必要な場所がどんどん作られていくにつれてみんなの頭からは“空”という概念が消え去っていった。
やがて侵略される前と同じように生活ができるようになった。ありえないことに自然や海などが存在している。
それでも“空”だけは存在していなかった。
だが、確かに人々の記憶の中には“空”があった。
ある人は家族と見たい。
ある人は友達と見たい。
ある人は恋人と見たい。
色々な表情を見せてくれたあの空を。
今でも、そしてこれからも彼らは思うだろう。
あぁ、空が恋しい。
7/6/2025, 10:55:40 AM