かたいなか

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前々回投稿分に続くおはなし。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、ようやく神使の見習いとして認められて、名前を授かったところ。

でも子狐、まだまだ小ちゃい子供なので、
自分が貰った漢字ばっかりの名前
【奇鍵守美食銀杏狐】
(くし、かぎもり・みけ の、 イチョウぎつね)
が読めません!!
「不思議な、鍵守と良き食物の、イチョウ狐」といった意味の名前なのですが、
しゃーないのです、子狐は、「子狐」なのです。

で、その子狐こそ、今回のお題回収役。
コンコン子狐、君と紡ぐ物語です。
不思議な不思議な稲荷子狐、君と紡ぐ物語です。

というのも子狐、次の春から修行のために、
おうちの神社から半年だけ、「ここ」ではない別の世界に出されることになりまして。

「やだぁ!!やだぁ!!」
ぎゃあん!!ぎゃあん!!ここココンコンコン!!
お母さん狐から修行に出されることを聞いて、コンコン子狐は泣き叫びます!
「かかさんと、いっしょ!ととさんと、いっしょ!
キツネ、おうち、いる!」

「なりません」
お母さん狐が静かに言いました。
「お前は次の春から半年、外へ出るのです。
外へ出て、外を知り、外のルールを学ぶのです」

お母さん狐のうしろでは、お父さん狐がわんわん、わんわん!ドチャクソに号泣しています。
子煩悩なのです。子狐と離れたくないのです。
でもお父さん狐は心を鬼、もとい祟り狐にして、
お母さん狐の味方をするのです。

「よいですか」
お母さん狐、言いました。
「かかさんは、雪の霊場から嫁いできた狐だから、詳しくは知りません。
だけどお前のととさんも同じ年頃で、ととさんのととさんと、かかさんから、離されたのです。
お前の子供も、そのまた子供も、同じように、
同じ年頃の頃にお前から離されるでしょう」

外に出なさい。外を知りなさい。
お母さん狐は優しく、ただただ優しく、
駄々っ子でギャンギャン暴れる子狐を諭しました。

「やだ!やだ!キツネ、かかさんといっしょ!ととさんといっしょ!おうち、いる!」
「なりません」
「キツネおそと出ない!キツネ、ここ、いる!」
「なりません」
「やだ!やだ!かかさん、やだ!」

「お前を預かってくれる世界線管理局には、お前のために、毎日上等なお肉とお揚げと、それから果物を出すように伝えてあります」
「キツネおそと出る。」

よしよし。良い子良い子。
子狐とお母さん狐のおはなしが終わったところで、
まずは子狐の修行場所へ挨拶に向かうべく、
子狐はしめ縄の付いたペットキャリーに入れられて、外で待っておった修行先の人に託されます。

「おとくいさんと、いっしょ!おとくいさんも、いっしょに、おそと行く!」
「安心なさい。お前のお得意様も、一緒です」
目指すはコンコン子狐の大好きな「お得意さん」、藤森のアパートです。
子狐の修行のお目付け役として、藤森は狐に選ばれて、そしてそれを、告知に行くのです。

「おにく、おにく!」
すべては稲荷子狐が、立派な稲荷子狐になるため。
コンコンコン、君と紡ぐ物語を、無事来年の春から始めるための、準備が始まるのでした。
「おあげさん!おあげさん!」
子狐と紡ぐおはなしでした。 おしまい。

12/1/2025, 4:28:46 AM