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“新年の抱負 ”

事前に配布されていたプリントを前に溜息を一つ溢す。随分簡単に言ってくれるものである。

少なくとも自分にとって抱負など簡単に思い浮かぶものではないし,まして人に見せるものでもない。


宣言効果については理解しているけれど,他人の抱負に興味はないし自分のものを見せるのも心の内を見られるようでありがたくない。

かと言って適当なことをでっち上げて書くのは性に合わない。そもそも何故個人のことに赤の他人がどうのこうのと口を出すのか。数ある課題のなかでも最も嫌いなものの一つである。


例年通り,立てた目標の中から適当なものを繕って嘘でもないが本当とも言えない 見た相手が気に入るようなよくあるようなものを綴っておく。


「馬鹿馬鹿しい」

子供ながらに必死で考えた抱負は否定されて,いつもやっている行動を書けば満足するのなら そんなものはもう偽りも偽り,意味なんかありもしないただのハリボテ。


─毎日小説を書く

それの何が悪いと言うのだろうか。将来の役に立たない? 語彙力や想像力·観察眼を大人が否定するのか。自分の思うままにしたいならはじめからそう言えばいいものを。

どうせ口先だけで叶わない抱負で満足するのならなんてお幸せなこと。見くびるのも大概にしてもらいたい。



抱負 そんな大切なものを教えるわけないだろう。人の夢を否定するしかしない人たちなんかに。

大体そんな大層なことを自分が叶えた試しもないくせに。あなたには期待しているとか耳触りのいい言葉なんかほざくばかり。鬱陶しい。


自分の生きたいように生きる。後悔しないように,毎日を大切にする。

地に足がついた現実的なものでないといけない?知らないし。世間知らずな子供上等。誰かの引いたレールの上を意思も伴わず流されるままの走るだなんて冗談じゃない。


「······良い子 なんか居ないよ」

都合の。ドールじゃないんだから。人形遊びはいい加減卒業していただいてもよろしくて?あなた達 いい大人でしょう?



「素晴らしい抱負ですね。皆さんも見習いましょう」

ああ,本当に 大人なんかなりたくないな。成熟した子供になりたい。自然に年をとるのではなく,自ら年を重ねたい。

目の前に居る大人も子供の頃はそう思ってたはずなのにね。本当時や,忘却 諦めの残酷なこと。


······いつか自分もそう思われるのかもしれないけれど。長く生きただけで大人と呼ばれる世界。

なんって恐ろしい。



テーマ : «抱負»

1/2/2023, 11:58:45 AM