「ごめんね。」
泣きながら言う彼女。俺はただ、笑っていた。
「好きです。付き合ってください。」
俺は、幼馴染であり初恋の相手でもある彼女に告白した。彼女は俺の告白を受け入れてくれた。聞くに彼女も長年片思いを拗らせていたらしい。俺達は、知らない間に両片思いだったんだ。今日から彼氏彼女という嬉しさでどうにかなってしまいそうだ。これから素晴らしい日々が待っている、そう期待していたのに。
彼女が交通事故に遭い、亡くなった。俺の世界が壊れる音が響いた。何度も泣いて、何度も自殺しようと思った。その度に彼女は俺の目の前に現れた。
『生きて。私の分まで。』
それだけ言って消える彼女。君の言葉を聞くと生きたくなってしまう。本当に魔法みたいだ。
俺は今日も、彼女に逢うために自殺をしようとする。馬鹿げた行動だ。それでも、彼女に逢いたい。その一心で生きてきた。今日も彼女が止めに来る。その言葉を遮り、俺は彼女に言う。
「君が好きだ。この先だって、君以外を好きになんてなれない。だから、君に逢いに逝きたいんだ。」
彼女は泣いて、謝っている。少し言い過ぎたかな。でも、これが本心だ。俺は、笑っていた。彼女の真面目さは変わらない。
『私だって君と生きたかったよ。』
小さな声で言う彼女。同じ気持ちに頬に熱が上がる。
「ありがとう。それを聞けただけで満足だよ。暫くは生きてみるよ。…またね。」
彼女は笑った。しかし、彼女の目には大粒の涙がある。きっと、俺も同じ顔をしている。
あれから何年経っても、彼女への思いは健在だ。今日も俺は、彼女と行った場所を巡っている。そうやって俺は彼女との失われた時間を紡いで生きていく。
5/13/2024, 3:38:30 PM