ふー、と静かに誰かが息をついた。
ゆらゆらと息に合わせて揺れる灯火。
「ちょっと、消さないでよ!?」
誰かの語気を強めた言葉が飛ぶ。
その言葉に合わせるように、火はまたゆらりと揺れた。
「あんただって!」
別の女が言う。
「まあまあ、言い合いしてても始まらないでしょ。ほら、するなら早くしましょう」
また別の女が言う。
彼女たちは、教室の机の上で一枚の紙を囲んでいた。中心に灯火の点いたロウソクを立てて。
おまじないをするために囲んだ用紙。
誰かが誰かから聞いたという、質問に答えてくれる、はたまた願いを叶えてくれるというおまじない。
大人に言わせれば、それは降霊術だとかオカルトの一部だとかくだらないと一蹴するするものだったが、彼女たちはいたって真剣だった。
「じゃあ、いくよ」
そんな方法は聞いていなかったのに、みな自然と手を繋いだ。
「ハンモクさま、ハンモクさま、お越しください。お越しくださったら、ロウソクの火を一度揺らしてください」
/12/7『灯火を囲んで』
11/7/2025, 12:44:08 PM