もずく

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目が覚めるまでに

 ぱち、寒さで目が覚めた。
 連日の熱帯夜にクーラーは欠かせないが、よく冷えた部屋は丹楓には冷えすぎたらしい。タオルケットを頭まで被り、それでも寒さが和らがないので、手当たり次第に寝ぼけ眼のまま辺りを探る。思ったよりも近くで何か温かいものに当たって、よく確認もせずに縋りついた。
 自分の体温よりも少しだけ温かい何かに、両の手を添えて額をうりうりと押し付ける。ふは、と頭上から声が漏れ聞こえて、それからタオルケット越しに優しく抱きしめられた。
「甘えたか?」
「寒いんだ。さむさで起きた。まだねむい」
 だからまだ寝る。でもさむい。ぼやぼやした声で、ぐいぐい頭を押しつけながら訴える。丹楓よりも低くて柔らかな声をした男は、「じゃあこうして抱きしめていたら眠れるな?」と大きな手のひらで丹楓の頭を撫でながら言った。
「おうせい」
「おやすみ、丹楓」
 タオルケットからずぼ、と腕を出して隣に抱きつく。ぎゅう、と力を込めれば、相手からの力も少しだけ強まって、なんだかとても気分が良かった。
「わたしが、…私の、目が覚めるまでに、手をはなしていたら、おこるからな…」
「怖。寝ぼけながら脅しをかけてくるなよ」
 ふわふわとした気分で、笑いを含んだ応星の声を聞いて、それからそのまま丹楓の意識はすとん、と夢の中に落ちていった。

8/3/2023, 11:58:52 AM