導(しるべ)

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「コウ君~、これ作ってみない?」
画面を見ると、そこには「簡単フィナンシェ」と「おいしいババロア」という文字が映し出されていた。
ふたりともお菓子はあまり作ったことがなかったから、僕の二つ返事ですぐに作ることが決まった。
小麦粉に卵、泡立て器にボウル、バター。
材料を一通り買い出しに行ったり、冷蔵庫から出したりして揃えた。
メニューをみて試行錯誤しながら作ること二時間。
冷蔵庫で固まったバニラ味のババロアと良い焼き色のついたフィナンシェが姿を現した。
それからホイップクリームを泡立てて、さくらんぼやりんごを切って飾り付けると、世間一般でいう「映え」な分類に入るとてつもなく可愛らしいものができた。
生地が余ったついでにたくさん作った小さなクッキーもおいしくていい感じ。
ふたりで先に食べて、思わず「おいしい」と口に出た。
そして彼とふたりで顔を見合わせて笑って、いろんなことも話したりした。
後から帰ってきたみんなにももちろん作っておいて、みんなの食べるところも見た。
みんな反応は違えど絶対においしいと思っているような顔をしていて、胸があたたかくなった気がした。
こういう日常のささいな、つまらないことでも幸せを感じられるようになった自分が、前よりも人間らしくなったと感じた。

8/4/2024, 11:31:32 AM