思い出

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「この前は、本当にありがとう。凄く嬉しかった。
これ、良かったら受け取って欲しいの。」

彼女は花の咲いた様な笑顔で言った。
その掌には、美しい貝殻のイヤリングが有った。

〔大切な人の辛い時だし、隣に居られて良かったよ。
綺麗だね、ありがとう。〕

私はそう言って、イヤリングを受け取った。
掌の上に有る小さな貝殻は、キラキラと光を反射する。
とても可愛らしい。

先程の言葉に少し恥ずかしがった様子の彼女は、
少し顔を赤くして言った。

「本当に、もう。
折角だから、付けてみて。貴女に似合うと思うの。」

私は少し苦笑いをしてしまう。

〔こんなに可愛らしいデザイン、似合うか不安だね。
…嗚呼、そうだ。キミに付けて欲しいな。〕

少しイジワルに言うと、彼女は思っていたよりノリノリで
私の掌の上に有る、イヤリングを手に取った。
そして、

「良いよ。付けてあげる。」

そう言って、私の顔と彼女の顔が近づく。
ふわり、と良い香りがした。ドキリとする。
先程迄私がイジワルしていたのに、仕返しをされている。
ドギマギしていると、耳に僅かな痛みが走った。

「…付いた。やっぱり、とても似合っているわ。」

そう言って彼女の顔が離れていく。少し、ホッとした。
彼女は何処となく誇らしげにしている。

その時に、普段は髪の毛で隠れている耳がちらりと、
見える。イヤリングが付いていた。

気になった私が耳元をじっと見つめると、
彼女は気が付いた様で白く、華奢な指先で、髪を耳に掛けてみせる。

やっぱり。お揃いだ。

「勝手にお揃いにしてごめんなさい。」

と、申し訳無さそうにしている。

私は慌てて、彼女の手を優しく握り、

〔いや、全然大丈夫。寧ろ、すっごく嬉しい。〕

そう言って笑った。

すると彼女は嬉しそうに、笑って

「ありがとう。」

と言った。

一生大切にする。

そう云えば、彼女は私の耳を触り、嬉しそうに頷いた。

9/5/2023, 11:51:23 AM