詩歌 凪

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 沈む夕日

 すべての罪悪は意思から生まれる。だからあたしは何も考えない。
 あの日、山の稜線に日が昇るころ、あたしとあの人はここで出会うはずだった。あたしは、いつもこの世界の仕組みを知りたがっていた。そしてあたしはあの人に「とっておき」のいいものを見せてあげると言われて、まだ日も差さない時間にここで待っていたのだ。
 しかしどうだろう。いつまで経ってもやってこない彼女に痺れを切らせて、あたしは辺りを探しに出た。少し探して、そこで見たのは数人の男と彼女の変わり果てた姿だった。
 あたしの頭に血が上ったのはあの一度切りだ。
 ちゃんと意識はあった。あたしは自分の意思で、自分の手で、その男達を殺した。あたしが待っていた場所も含めてそこ一帯は立ち入り禁止の禁域で、あの人はただ掟破りで殺されたと知ったのはそのすぐ後だった。
 罪を犯したのはあの人を殺した男達ではなく、あの人だった。それを知った時、あたしも罪人になったのだ。
 同時に、あの人が立ち入り禁止区域なんかに呼び寄せた理由も永遠に分からなくなってしまった。
 あたしは罪人だ。だからあの日からあたしは何も考えなくなった。すべての罪悪は意思から生まれると知ったから。
 そしてあたしはもうずっと朝日を見ることもできず、今もこうして暮れなずむ禁域で金色の夕日を眺めている。懺悔の代わりとでも言うのだろうか。とても馬鹿馬鹿しい。

4/7/2024, 2:53:39 PM