#目が覚めるまでに
見知らぬ世界で一人彷徨っていた
知り合いも、身内も、誰もいない
空には見たこともないような雲が浮かんでおり
木に触れると砂糖菓子のように脆く消えていった
絵本で見るようなメルヘンな世界
その光景が返って私を不安にさせた
ここは一体どこなのだろう?
歩いても、歩いても、寂しさだけが増していく
私はその場に泣き崩れてしまった
貯められなくなった涙を必死に手で拭う
ここには誰もいないはずなのに、
なんだか誰かに見られているような気がした
滲んだ景色が白いもので染まった
最後にもう一度目を擦り、上を見上げた
そこには、ハンカチを持った彼がいた
もうこの世にはいないはずの彼が
差し伸べられた手を借りて立ち上がる
鉛のように重かった体が、空気のように軽くなっていた
話したいことは山のようにあった
でもいざ彼の顔を見ると何も出てこない
戸惑う私を落ち着かせるように彼は薄く笑った
そっと私を抱きしめる
私は彼の腕の中で、彼の体が消え始めているのを見た
“待って…!”
かすれた声は空気に溶けて消えていった
彼がいた場所には、もう残像すらなかった
再び襲う寂しさと、それと同時に嬉しさと
様々な感情が入り混じった
そして、分かった
私はもうすぐ夢から覚めるんだと
全て夢だったんだと、
彼はもういないんだと
夢が覚める前に、彼に会えてよかった
一筋の涙が頬をつたう
私の体も消え始めていた
8/3/2024, 12:19:19 PM