その人は自分にとって長いこと絶対であって、かれの言葉を信じ、かれの後ろを拝して歩くことがすべてだった。そう思うことで自分がなにか大きくつらいものから解放されて、しあわせになれるような気がしたのだった。それが間違いであったことに気づいた時にはもう遅かった。かれに恥をかかせたと思った。あるいはもっとひどかった。当たり前の事実として、かれはただの人間だったから全知全能ではあり得ず、自分のどうしようもない失敗を掬い上げて取り返しのつくようにすることはできなかったのである。
報いる術を知らぬまま、前を向いてももうそこには誰もいない。
#神様へ
4/14/2023, 10:07:48 AM