#どこまでも続く青い空
水色になりたいな、と思った。ある日突然。そして背中に羽根を生やして空に向かって飛び立つような心境になりたいな。
巷で言われるような希死念慮とかではなくて、私は、本当に自分がいつか空を飛べるようなとんでもない結果を生み出すんじゃないかと予感しているのだ。
友だちにそれを伝えたら「でっかい夢叶えるぞみたいな? 偉人にでもなるの?」と頭にたくさん疑問符を浮かべた表情で返された。でも私は知っている。誰に何と言われようと、自分の抱いた予感は現実になると。
「みのりは進路どうすんの?」
友だちはため息をつきながら、明日出される小テストの予習のために英語の単語帳とにらめっこをしている。私はというと、教室の窓から見える空を目一杯眺めて、「やっぱり私、何かするんじゃないかなあ」とつぶやいた。
「そりゃ、何かはしでかすよね。あんたバカだし。バカだし。バカだし。今だって会話成立してないし」
「ひどいー。夢《ゆめ》ちゃんだって何か目指したいものの一つはあるでしょ」
「私は堅実に生きたいだけさ」
友だちの無情な指摘にブーブー文句を言いながら、私は窓の外の空を、今日はやけに綺麗に見えるなと感じていた。
☁️
「何かを成し遂げるって、頭良い人だと難しいのかなぁ。バカな人ほど未来を変える力があるんじゃないかって、最近考えてるのよ。あんた見てると」
「私、そんな風に野心を抱いてたわけじゃないんだってば。ただね、空飛びてー!って思ったのよ。あんたとしゃべってた、あの日の放課後、急に!」
私たちは互いのグラスに祝いの酒を入れ、乾杯をした。十数年続いているこの友情と連帯と、人生の節目を祝って。
「宇宙飛行士としてテレビに映るあんたは、どこまでもバカよねぇ」
「絶対、褒めてないでしょー」
ふんと鼻を鳴らしながら、そのくせどこか得意げに彼女はグラスを飲み干した。
10/23/2023, 10:27:44 AM